クサムラマッドラット|Artist interview
クサムラマッドラットとは
クサムラマッドラット(KUSAMURA MAD RAT 以下クサマラ)は、オオムラチカラ、ふとまっちょ王子、宮上ふとっちょ、jumbogの4名が広島市立大学在学中に結成したアーティスト集団。この春から拠点を広島から首都圏に移し、共同生活しながら作品を制作している。広島市立大学芸術資料館史上初となる学生主体で個展企画を成功させ、最近では雑誌Penに「破壊するカオスの力がアートの未来を創る」とのコメント付きで取り上げられ注目を集めているが、作風がぶっ飛んでいるのに加えてちょっと見た目が怖いので、近寄りがたく謎多き存在ともなっている。
そもそも彼らの結成の契機には、当時広島市立大学で非常勤助教をしていた久保寛子(彫刻家)の影響が大きい。「毎晩尽きることのない下ネタトーク、スマホから流れる日本語ラップ、そしてガチな相撲試合を繰り返していた」4人に見込みを感じ、「無尽蔵なエネルギーと有り余る時間がクリエイティブな行為に結びついた時、きっと何かを生み出す」と直感した久保は、「チーム作ってコンペに出してみたら?」と提案。こうして結成されたクサマラの処女作品は見事大賞を受賞した。その後もクサマラは久保の運営するオルタナティブスペースコアで個展を開催するなど、彼らにとって久保は自他ともに認める「母」である。
このたび活動拠点を首都圏に移した彼らに、インタビューを敢行。クサマラとはいったい何者で、何を考えているのだろうか―。
順に、オオムラチカラ、ふとまっちょ王子、jumbog。宮上ふとっちょは都合により不在。
見た目はいかついが、じつはピュアな青年たち。HOOTERS渋谷店にて。
4人でちゃんとまわってる
ーそもそもクサムラマッドラッドってどういう由来なんでしたっけ。
ふとまっちょ王子(以下、王子):メンバー4人の頭文字です。
jumbog:なんでやねん!ほんま!
オオムラチカラ(以下、オオムラ):あとはイギリス軍の戦車にマッドラットってのがあって。
*編集注:本当のところは王子が小学生の時に友達の家で見つけたとある書籍名に由来する。
ー4人でひとつの作品を制作するというスタイルで活動されてますが、役割は分担しているんですか?
オオムラ:まず4人で会議して、展示や作品の内容を決めて、役割分担してます。モノづくりは宮上以外でやることが多いんですけど、最後に困ったときは、jumbogです。
jumbog:要するにおれが本田圭祐でオオムラがアイルトンセナで王子がダースベイダーで宮上がシャラポワってとこやな、スペシャリストが集まったちゅーわけやな!
―4人でやる難しさとかないんですか。バンドでいう「音楽性の違い」のような...
オオムラ:いまのところはないです。クサムラマッドラットの作風ってわかりやすいですからね。今はそこを探求してる。
王子:いまは4人やってでるグルーヴ感だせてるよな。
jumbog:だるいことはワイがやったるしなあ!
オオムラ:アートの方向性の問題だけであれば一人でやればいいし、問題になるとしたらそれ以外のところでストレスが溜まってきたときですかね。
jumbog:まとまりは...ないで!王子が一番クサマラっぽいセンスがあるんや!オオムラがブレーンとしてアイデアをどうやったら実現できるか考えて、実際に具体化する段階になるとワイが出てきて、ふとっちょはほかの3人ができないこまごましたことを回収する、という分担や!ワイはあんまり思想とかないんで、みんなには子分扱いされちゃってるんやけどもしかし、でも4人でちゃんとまわってるやで!
オオムラ:考えてみるとがっつり4人で立体作品つくってますみたいなのはあんまり聞かないかもしれないです。カオスラウンジとか、個々の活動と並行してコレクティブな活動もやってるグループはちょくちょくありますけど。
「クサムラマッドラッドのこれが欲しかったんだろ!!展」無事終了しました!欲しいものは手に入れられましたか??❤️大勢の方にご来場いただき各方面怒涛の絶賛の嵐ありがとうございました!今後もがんばっていきたいと思っているので応援よろしくお願いします!👨👨👦👦大集合👨👨👦👦 pic.twitter.com/8RicMX5cLm
— KUSAMURA MAD RAT (@KSMR_padomelove) 2017年11月27日
―アーティスト集団としてインスタレーションや映像作品を展開していくという意味で、Chim↑Pomと重なって見える気がするんですが、いかがですか?
オオムラ:実はそんなに意識してないですよ。Chim↑Pomは時事的なところに突っ込んでいくのに対して、ぼくらが取り組んでるのはもうちょっと普遍的なところです。時事ネタをアートで扱うには反射神経がいりますし、僕らは割と普遍的なものが好きです。
王子:俺は時事ネタ好きだけどね。
オオムラ:時事ネタっぽい提案出してくるもんね。でもやっぱり作品として完成させるまでの反射神経は俺たちにはないんだろうなって思いますし、そういうのって寒い表現になりがちなんで難しいですよね。
―広島から東京に拠点を移して活動するにいたる経緯としては何かあったんでしょうか。
オオムラ:東京に来た理由は広島で何年か活動してみて、これからの展開が想像しづらかったんですよね。身近だと岩崎貴宏さんや七搦綾乃さんなど広島を拠点に活躍している作家はいるんですけど。まあせっかちなんですよねきっと。
王子:上京って響きがファッキンバイブス上がるよね。
楽しくなくなったら終わり
―作品づくりにおけるテーマはなにでしょう?
オオムラ:いま次の展示でやりたいことは速度、スピードですかね。人類は速さを求めてきたじゃないですか。
jumbog:速さについて普段いちいち意識しないので、それを意識的に表現しようと思ってまんねん!最速やで〜。
王子:おれは早漏の深刻化がやばかったけど最近は復興の兆しもあるし、ライオンがめちゃ早漏ってゆうのを知って心にゆとりを持てるようになった。知ってた?ライオンは3秒でいくんだよ。
一同:へ〜(驚嘆)
―そういえば、「一休さん」とか「トーマス」とか「プリンス」とか、回転する作品が多いですよね。
jumbog:「ハンマーベイビー」もストーリーが回転してるで!
オオムラ:でもたまたまじゃないですかね。「回る」ということに対して個人的な解釈はありますけどそこはそれぞれでいいと思ってます。あと単純に全部落ち着きがないのはある。
クサムラマッドラット個展は
— Alternative Space Core (@AlternativeSpa2) 2018年10月21日
金土日曜 16:00-22:00の開場です。
プリンス好きには必見の展示となっております。#クサムラマッドラットラット#オルタナティブスペースコア#Prince pic.twitter.com/OAYcmmYzn0
―少なくともポップではありますよね。
オオムラ:楽しそうなこと、かっこいいものへのあこがれはありますよ。
王子:楽しくなくなったら終わりだよな。ポップだとおもったことはなぁ。
jumbog:作品作りはダルいけどなあ!楽しいのは完成間近の10秒で終わってまんねんや!しかし!
オオムラ:ポップさみたいなものは割と意識していて、できるだけ低俗なものでありたいです。たまに僕らの作品を最低とか最悪とか言ってくれる人もいるんですけど、それは僕らにとってはすごく褒め言葉なんですよね。
―だから作品の対象は虚構的なものばかりなんですね。
jumbog:「アンジェリカ」がおるけどな!
オオムラ:生きてても死んでても、同じようにフラットな距離感なんじゃないですかね。僕らめっちゃYouTubeみますし。もちろん同じ時代をいきているという意味で影響が全くないということはないんですけど。
目指すべきポジション
―クサマラの考えるアート観みたいなものってありますか?
オオムラ:さっきも言いましたけど、僕らはクサマラとしてできるだけ面白くてカッコよくて低俗なものを作っていきたいです。でも結局アートとして素晴らしい物って、それを見て感動したり、創作意欲が湧いたり、どれだけ人を揺さぶれるかですよね。
王子:オレジナリティ、オレラジナリティ
オオムラ:音楽もちょっとやってみたい。演者と観る人を同じバイブスに持っていけるじゃないですか。あと、入場シーンあるのうらやましいですよね。ちょっとそこはコンプレックスありますもん。アートにそれができるか模索中です。
―クサマラはどこに向かっているんでしょうか?
オオムラ:クサマラはエンターテイメント性は大事にしてます。美術史との関係性とかも考えないことはないですけど、正直大衆からの目からは美術史があーだこーだってあんまり面白いものとして見えづらいと思う。ぼくたちが影響を受けてるのはハイアートというよりもサブカルチャーの文脈のほうが強いですし、もっと楽しいものでいいんじゃないかと。
アートの世界ってどうしてもすごい狭いので、あんまりアートのコミュニティのなかだけに引きこもらないで、それでいて作品として極めていけるような、中間のポジションにいきたいんです。最近のニュースで、津田大介さんのあいちトリエンナーレのキュレーションが話題になりましたけど、変化は中にいない人がやることで起こる部分ってあると思うんです。ただ一方では、中間的なポジションをとるブランディングも簡単じゃないんですよね。
王子:宇宙だよね、宇宙で展示がおれらの一旦ゴール地点であり天命だったんだけどなんか剛力の彼氏がアーチストを宇宙に連れてくみたいな話があったからおれらは心霊スポットとかで展示したいね。
jumbog:宇宙で展示!めっちゃしたいでホンマ!宇宙で吸うタバコはうまいんやろなあ。
―首都圏に進出し、今後はどのように活動していきますか?
王子:爆速すね。生き急いでんなって思われたい。
オオムラ:しばらくは展示やコンペなどを中心に活動していく予定ですね。あとは家で展示をしようと思ってます。
jumbog:展示の会場では、みんないいよねって感想を言ってくれるんやけど!言ってくれるんやけど!
オオムラ:とにかく沢山の人に見てもらえればと思います。
―自分たちで課題に感じていることはありますか?
王子:金運。
オオムラ:まああとは英語とか。
jumbog:あとはどういう順番とか角度で見てもらうかとかはめっちゃ考えますね。
オオムラ:モノだけだとしらけちゃうし、もっと広い空間でもやっていくうえで、わかりやすい場づくりはもっとうまくなりたいです。
Twitter:@KSMR_padomelove
instagram:@kusamuramadrat
Youtube:「ザ・クサムラマッドラットショー」